なま)” の例文
「しかし、その信心ができぬ。拙者にはこうなるが天罰じゃ、当然の罰で眼が見えなくなったのじゃ、これはなまじい治さんがよかろうと思う」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
然し単に一法律家に過ぎぬ私が、なまじ変な小説を書けば世のわらいを招くにすぎないでしょうから、私は今、あなた方の前に事件を有りの儘にお話して見ましょう。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
小峰「本当になまじ逃げようなぞとして怪我アしてはいけませんから、おとなしく名乗って出て下さいよ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうしてなまじの学問が祟って実際浮塵子同様の成績を挙げることもあるのですよ。百姓々々って決して馬鹿になりません。現にこの頃頻に宣伝している内米ないまいの消費節約ですね。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昇なんぞは蚊蜻蛉かとんぼとも思ッていぬが、シカシあの時なま此方こっちから手出をしては益々向うの思う坪にはまッて玩弄がんろうされるばかりだシ、かつ婦人の前でも有ッたから、為難しにくい我慢もして遣ッたんだ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
すゝめ申しに參りましたといひければ長三郎は片頬かたほみ今に初ぬ和郎そなた親切しんせつ主人思ひは有難けれどなまじ戸外へ出る時はかへつて身のどく目の毒なればたゞ馴染なじみし居間に居て好な書物をよみながら庭の青葉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
普通の手紙の型はなまじな愛の文句で綴られた文よりも、はるかに力強き或る印象を与えるものである。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
しの「今になってなまじいにそんな事はいわねえで、黙っておっんでしまえ、何うぞ若旦那さま、何時までも苦痛をさせたくねえでがんすから首を打落ぶちおとして下せえまし」
そこだ、なまじい出来るより、全く出来ない方がよい。そこを見込んでお前に武者修行をすすめるのだ。少しでも出来れば、ボロの出る心配があるが、全く出来なければ、ボロのでようがない。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いっそ私が小三郎だと名告なのろうか……イヤ/\なまじいに打明けて身の上を話したら、是程までに思ってくれる音羽ゆえ、私が俄盲目にわかめくらに成り、笛を吹いて修行をする身の上に零落おちぶれ果てたと聞いたら