心中立しんじゅうだて)” の例文
「とんと落ちなば名は立たん、どこの女郎衆じょろしゅ下紐したひもを結ぶの神の下心」によって女郎は心中立しんじゅうだてをしたのである。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
あま心中立しんじゅうだてを物珍らしそうに、世の中にゃあ出ねえの、おいらこれッきりだのと、だらしのねえ、もう、情婦いろを拵えるのと、坊主になるのとは同一おんなじものじゃあございませんぜ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すげなくされりゃ無え縁だと諦めも付いたろうに、お前は上辺うわべ以前もとの通り、俺に心中立しんじゅうだてをしてる振りをした。現にきょうも俺を胡麻化すつもりだろう、のめのめとやって来やがった。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「はははは、当世女に、そんな心中立しんじゅうだては聞かぬところ、まず心配のないことじゃ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
通い勤めなり、別に資本出すなりと、丸官はんに、応、言わせたも、皆、貴方あんたが、美津みいさんのためにこらえなはった、心中立しんじゅうだて一つやな。十年七年の奉公を一度に済ましなはったも同じ事。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)