後歯あとば)” の例文
下駄の音がするたびに、今度こそは! 今度こそは! と待渡ったが、十一時が打って間もなく、小きざみな、軽い後歯あとばの音が静かな夜を遠く響いて来た。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
歩くことが激しいから、下駄はあとの方が直ぐ減ってしまうので、師匠は工夫をして下駄の後歯あとばへ引き窓の戸の鉄車を仕掛けて、それを穿いて歩かれたものです。
大きい素足に後歯あとばの下駄をはいて、意気がったような長い縞の前垂を蹴るようにして蓮葉に歩き出すと、やがて芝居や見世物のある通りへ弟を連れ出して来た。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
折から、からからと後歯あとば跫音あしおと、裏口ではたとんで
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「人にわらわれますよ。」と、お庄は後歯あとばの下駄を鳴らしながら、停車場へ入って行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)