した)” の例文
彼はもうしたたかに酔っているらしく、あやうく倒れそうになるところをやっと片足で支えると、こんどは猛然として攻勢に出てきた。
学校騒動 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
街へ出て私はしたたか酒を呷つた。荒れ果てた心の流れるままに、疲れた心を魔窟へ運んだ。相手の女は無智で陽気で気が良かつた。
狼園 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
父親は傍に立って見ていたが、おのれ、おれの伜をどうすると叫ぶなり、杵をふるってしたたかに男の頭を打った。
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
けれども、お初は、恋にかけても、したたかなつわものだ。すこしもゆるめを見せようとはしない。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「思い知れ、仏罰をッ」つづいてまた一人の者の振り込んだ棒が、範宴の腰ぼねをしたたかに打った。性善坊はすでに、暴力になったとたんに二人の法師を相手に取っくんでいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのはづみに百兵衛は脾腹をしたたか蹴りあげられて、秋のさなかへあつさり悶絶しやうとしたが、すると異様な人物は
村のひと騒ぎ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)