平中へいじゅう)” の例文
彼女は別段母を悪くは云わなかったが、平中へいじゅうとのことを知っていて、彼と母との媒介をする讃岐に対しては反感を持っていたようであった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そうこうするうち、その年の夏も過ぎ、秋も暮れて、平中へいじゅうの家のまがきに咲いた菊の花も色香がうつろう季節になった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今はしばらく筆を転じて、あの夜あの車の中へ「物をこそ」の歌を投げ入れた平中へいじゅうの方へ叙述を移そう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かの平安朝の宮廷の美女は、色好みの平中へいじゅうを魅惑するために丁子ちょうじで自分の排泄物を模造した逸話があるではないか。かりそめにも上﨟と云われる者にはそのくらいなたしなみがあったのである。