岡惚おかぼれ)” の例文
長「大変な訳です、素人の時分からあなたに岡惚おかぼれで、此の三月の節句から仲の町へ出ると云うんで」
「粋とはれて浮いた同士どし」が「つひ岡惚おかぼれの浮気から」いつしか恬淡洒脱てんたんしゃだつの心を失って行った場合には「またいとしさが弥増いやまして、深く鳴子の野暮らしい」ことをかこたねばならない。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
で、お蔦は、たとい貴郎が、その癖、内々お妙さんに岡惚おかぼれをしているのでも可い。河野に添わせるくらいなら、貴郎の令夫人おくさんにして私が追出おんだされる方がいっそ増だ、とまで極端に排斥する。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その女が自分の大事な兄に岡惚おかぼれしているという話を
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
智慧が有るとか財産かねが有るとか、官員に成っても勅任ちょくにんにでもなれる人には惚れてもいが、只顔の綺麗なのを見て浮気な岡惚おかぼれをするのは、今開化の世の中には智慧のない話でございますが
何だか嬉しくって成らねえこたえね、もし旦那忘れもしない六年あとのお祭で、兼ちゃんが思い切ってずうっと手古舞てこまいになって出た姿が大評判おおひょうばんで、半ちゃんがその時の姿を見て岡惚おかぼれをして
所で森松が岡惚おかぼれをしましてちょく/\うちの前を通りまして
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
豊志賀が私の様な者に一寸ちょっと岡惚おかぼれをしたのでな
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)