奔々ほんぽん)” の例文
人馬を高い所へ移すいとまもなく、遥か上流のほうから、真っ黒な水煙をあげて、奔々ほんぽんの激浪が押してきた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花柳かりゅうの間に奔々ほんぽんして青楼せいろうの酒に酔い、別荘妾宅しょうたくの会宴に出入でいりの芸妓を召すが如きは通常の人事にして、甚だしきは大切なる用談も、酒を飲みに戯るるのかたわらにあらざれば
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
奔々ほんぽんひらめく川水は前方に見えるが、柿崎隊の大蕪菁おおかぶら馬簾ばれんや、中軍の中之丸旗、毘沙門旗びしゃもんきのいたずらに啾々しゅうしゅううそぶくばかりで、いつまで経っても馬すすまずへいわたらず
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前にはなかった河が幾筋もできて小さな人力をわらうが如く、奔々ほんぽんと、その大石や小石をもてあそんでいた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後宮の女子たちの輿こしや、内官どもの馬や財産を積んだ車や、あらゆる人々が——その一人も後に停まることなく——雪崩なだれあって、奔々ほんぽんと洛陽の外へ吐き出されて行った。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)