夜廻よまわり)” の例文
日が暮れるとあたりは全く田舎の村のように静になって、門外を過る按摩あんまの声と、夜廻よまわりの打つ拍子木ひょうしぎの響が聞えるばかり。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
早や大引おおびけとおぼしく、夜廻よまわり金棒かなぼうの音、降来る夕立のように五丁町ごちょうまちを通過ぎる頃、屏風のはしをそっと片寄せた敵娼あいかた華魁おいらん
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
三人と騒がしからぬ旗亭きていに対酌すれば夜廻よまわりの打つ拍子木ひょうしぎにもう火をおとしますと女中が知らせを恨むほどなるに、百畳にも近き大広間に酔客と芸者の立ちつ坐りつする塵煙
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「まだいいやな。あの夜廻よまわりは九時打つと廻るんだ。」
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)