埴安はにやす)” の例文
夏のはじめつころ、天皇埴安はにやすの堤の上などにいでまし給ふ時、かの家らに衣をかけほしてあるを見まして、実に夏の来たるらし、衣をほしたりと、見ますまに/\のたまへる御歌也。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
平原の真中に、旅笠を伏せたように見える遠い小山は、耳無みみなしやまであった。其右に高くつっ立っている深緑は、畝傍山うねびやま。更に遠く日を受けてきらつく水面は、埴安はにやすいけではなかろうか。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
海原は埴安はにやすの池をいへりとぞ。
万葉集を読む (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
埴安はにやすさとの土より
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
其右に高くつゝ立つてゐる深緑は畝傍山。更に遠く日を受けてきらつく池は、埴安はにやすの水ではないか。其側に平たい背を見せたのは、聞えた香具かぐ山なのだらう。旅の女は、山々の姿を辿つてゐる。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)