四股しこ)” の例文
桜もつぼみがふくらんだとはいえ三月末の陽気は日暮の近づいた今、肌のしまる寒さであった。実枝は羽織も着ず、四股しこをふんだ。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
かけらがくちびるからひっこんだと見ると急に四股しこを踏むようなおおぎょうな身振りをしながらばりばりとそのガラスを噛み砕く音を立て始めた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
この時この瞬間ほど不具者かたわでありながら自分の両脚がシャンとしてスックと大地に四股しこを踏んで、両手を振って自由自在に闊歩のでき得るような
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
かれの不器用ぶきようさは朝倉先生どころではなく、その手振りはまるで拳闘けんとうでもやっているような格好であり、その足の運びには、四股しこをふむ時のような力がこもっていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
刑事は、貫一の前で地響をたてて四股しこを踏み、腕を曲げてみせた。なるほど幽霊ではなさそうだ。
酔った辰爺さんは煙管と莨入たばこいれを両手に提げながら、小さな体をやおら起して、相撲が四股しこを踏む様に前を明けはたげ、「のら番は何しとるだんべ。のら番を呼んでう」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
槍ヶ岳や大天井おおてんしょうとの相撲すもうには、北穂高東穂高の二峰がそれぞれ派せられている、いずれも三千米突内外の同胞、自ら中堅となって四股しこを踏み、群雄を睥睨へいげいしおるさまは、丁度
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
新撰組の沖田総司そうじは、力自慢がこうじて相撲を一人ひっぱり出し、庭へ下りて四股しこを踏む。
同じことは、相撲すもうを見るたびに、いつも感じた。呼出よびだしにつづいて行司の名乗り、それから力士が一礼しあって、四股しこをふみ、水をつけ、塩を悠々とまきちらして、仕切りにかかる。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
四股しこを踏みしめて、街路樹と押しっくらがしてみたい。眼の前につっ立ってる、板塀や石壁や屋根などに、躍り上り攀じ登ってみたい。喉が張り裂けるまで、声の限りに叫んでみたい。
悪夢 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「知らぬか。角力すもう取りの四股しこを。——寧子、一番とろうか」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「サクラいうて書いてあらあい」と、四股しこをふんでいいかえす。
赤いステッキ (新字新仮名) / 壺井栄(著)
俊亮は立ち上って砂の上に四股しこを踏んだ。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)