嘲笑わら)” の例文
もしそれが日頃の誓約せいやくや態度とちがって、裏切るようなことでもあったら、嘲笑わらってやろうという気振けぶりさえ見えないこともない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は自分の莫迦らしい妄想を嘲笑わらい、何時の間にか眼の前で両手を確乎しっかり固めて居るので急いで其の拳を解き、ふう……と溜息を洩らしました。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
しかし、君、僕だつて左様冷い人間ぢや無いよ。ひと手疵てきずを負つて苦んで居るのを、はたで観て嘲笑わらつてるやうな、其様そんな残酷な人間ぢや無いよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
屹度あの婆あどもは、後でおらたちを嘲笑わらつてゐくさるだよ、でなかつたら、この場へ新らしい帽子を賭けてもええだ。
落ちる度に、自分の失策を嘲笑わらはれて腹を立てた子供のやうに眞劍な顏付で起上つて、(背中に立つてゐる裝飾風なギザ/\が、もの/\しい眞面目な外觀を與へてゐる)
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
(「時」はすべてのものを嘲笑わらう。されど金字塔は「時」を嘲笑う)——その金字塔が沙漠の上、五町の彼方かなたに夕陽を浴び、黄金こがねの色に煙りながら、いかめしく美しくそびえている。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その芝原へ杉を植ゑることを嘲笑わらったものは決して平二だけではありませんでした。あんな処に杉など育つものでもない、底は硬い粘土なんだ、やっぱり馬鹿は馬鹿だとみんなが云ってりました。
虔十公園林 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
と、嘲笑わらった。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
まるでこの人間どもは、おれの今をはやしていやがる。おれのこの形相を嘲笑わらっていやがる。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よくこれまでそれを見て嘲笑わらったりした、顔じゅうを繃帯して、二つの穴から眼玉だけ出している乞食の老婆の立ちならんでいる間を押し分けるようにして、伽藍へ駆けつけるなり
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
その芝原へ杉を植えることを嘲笑わらったものは決して平二だけではありませんでした。あんな処に杉など育つものでもない、底はかた粘土ねんどなんだ、やっぱり馬鹿は馬鹿だとみんなが云ってりました。
虔十公園林 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自害などしたら、奴等が、こぞって、手をって嘲笑わらおう。それが、いやだ、無念だ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐせのように——大阪が恋しい、大阪が恋しい、となげいていたお米を嘲笑わらって
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれみろ!」と、指さして、町の天狗のように、わあわあと嘲笑わらう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、これを聞いて、ひとり嘲笑わらったのは、奥にいる狼友だった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「異約あるにおいては、天下へ向って、嘲笑わらい申すぞ」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海は嘲笑わらう。くがいかる。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)