吹雪ふぶ)” の例文
昨日の昼頃から降り出して、一晩中烈しく吹雪ふぶいたのが、今朝は深いあおさに晴れ渡って、吹き溜りの稜線がきらきらと眩しかった。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
おいら五六人で宿営地へ急ぐ途中、ひど吹雪ふぶく日で眼も口もあかねえ雪ン中に打倒ぶったおれの、半分埋まって、ひきつけていた婦人おんながあったい。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
言葉どおりに水平に吹雪ふぶく雪の中を、後ろのほうから、見上げるような大きな水の堆積たいせきが、想像も及ばない早さでひた押しに押して来る。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
差入のことや家のことや色々なことを云った後で、弟は片方の眼だけを何べんもパチ/\させながら、「故里くにの方はとても吹雪ふぶいているんだって。」
母たち (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
しきりに吹雪ふぶく日で、おばあさまは切炉に火をきながら庭の雪景色をたのしそうに眺めていらしった。
日本婦道記:桃の井戸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そんな時なんぞ、どうかして不意にその雲の端が村の上にかかると、南に連なった山々のあたりにはくっきりと青空が見えながら、村全体がかげって、ひとしきり吹雪ふぶく。
雉子日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
ひととき、「入れ食いの手水鉢ちょうず」のように釣れる。多いときには、一度に五、六尾はりにかかってくる。ボックスの戸をあけてみると、一間先も見えないくらいに吹雪ふぶいている。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
恐ろしいのは風であって、いったん吹雪ふぶいてくると、十フィート先も見えなくなる。
白い月の世界 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
日が出きれないうちに吹雪ふぶきになった。
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
おいら五、六人で宿営地へ急ぐ途中、ひど吹雪ふぶく日で眼も口もあかねへ雪ン中に打倒ぶったおれの、半分まつて、ひきつけてゐた婦人おんながあつたい。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
吹雪ふぶいてひどかったろう」
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)