これらの命名は客観的にその人々の特徴とくちょうを言い現したものだといえば、名はたいをあらわすといわれる、いわゆる名詮自性みょうせんじしょうとやらである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
僕の家には忠八という名詮自性みょうせんじしょうの忠僕がいた。もううに死んだが、僕は忠犬八公を連想する。八公の銅像を見た時、顔も似ていると思って、感慨無量だった。
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ここに俗に陶器師すえものしと呼ばれた奇妙な賊が住んでいた。今日のいわゆる胎内潜たいないくぐり——その辺に巣食っていたのであって、名詮自性みょうせんじしょう表向きは陶器を焼いていた。年は三十七八歳、蒼白い顔色、調ととのった目鼻。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
妻は幽香子ゆかこという。名詮自性みょうせんじしょう、蘭の花を聯想させるような美人だ。これを貰うについては、菊太郎君が一方ならず骨を折ってくれた。親友の有難味がないでもない。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「お師匠さんはナカ/\厳しかった。我輩は腕白もので叱られ通しさ。しかし胸はさとかった。お師匠さんも『太田原は名詮自性みょうせんじしょう宗郷むねさとじゃの』と頭は認めていてくれた」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何うだい? 『妻は幽香子ゆかこという。名詮自性みょうせんじしょう、蘭の花を聯想させるような美人だ』
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
山中村は名詮自性みょうせんじしょう、山また山の中にある。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)