古色蒼然こしょくそうぜん)” の例文
何にしてもそれは古色蒼然こしょくそうぜんとして埃にまみれている。秋から冬にかけては、縁側へ落ち葉が散りしいたのが幾日も掃かずにそのままになっていることがある。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
宿の主人が、自身でわざわざ持って来た、何か古錦襴切こきんらんぎれのような袋に包んだ、古色蒼然こしょくそうぜんたる箱物を一つ、うやうやしく伊太夫の枕許へ持って来て、念入りに備えつけました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
古色蒼然こしょくそうぜんたる建物だが、すこし詰めたら十家族ぐらゐは住めさうだ。
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
爾来じらい幾星霜いくせいそう風雨ふううにうたれたヘクザ館は、古色蒼然こしょくそうぜんとして、荒れ果ててはいるが、さいわいにして火にも焼かれず、水にもおかされず、いまもって淡路島の中央山岳地帯に、屹然きつぜんとしてそびえている。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
シーツもなしで、古色蒼然こしょくそうぜんとした学生外套がいとうにくるまり、頭には小さい枕がたった一つ、その枕を高くするために、持っているだけの肌着を、きれいなのも着よごしたのも、残らずその下へ突っこんだ。