反撥力はんぱつりょく)” の例文
私は自分の前に現われた女のために引き付けられる代りに、その場に臨んでかえって変な反撥力はんぱつりょくを感じた。奥さんに対した私にはそんな気がまるで出なかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまり反撥力はんぱつりょくの強い、ゴムのように弾力ある意志をもっている人間が勝利者となる。かかる人間は困難にえば遭うほど、その困難を打破せんとする意気が全身にみなぎってくる。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
芭蕉去って後の俳諧は狭隘きょうあいな個性の反撥力はんぱつりょくによって四散した。洒落風しゃれふう浮世風などというのさえできた。天明蕪村ぶそんの時代に一度は燃え上がった余燼よじんも到底元禄げんろくの光炎に比すべくはなかった。
俳諧の本質的概論 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その時勢に、新江戸の土くさい田舎いなかもののずぶとさと反撥力はんぱつりょくをもった、新開の土地などでは見られない現象を、古い伝統をもつ大都会、浪花なにわの大阪の土地に見たのは当然の事であったろう。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)