初蝉はつぜみ)” の例文
初蝉はつぜみが鳴き金魚売りが通る。それでも子供の声がすると「また、ひろ子のやつが——」とつぶやきながらまきは駆け出して行つた。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
初蝉はつぜみの声が静かだった。ふだんはもうでる人も極めて稀な貴船山きぶねやま奥之社おくのやしろに、今し方、誰か柏手かしわでを打って拝殿のあたりから去って行く気配と思うと
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初蝉はつぜみの鳴きだす頃には良左衛門など
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
新樹に初蝉はつぜみの声もする。湖から湖へ渡る山上の風はわけて快い。空腹を満たした兵たちは、ようやく眠気ざし、槍や銃を抱いたまま、彼方此処に転がり始めた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうこずえには初蝉はつぜみが聞える。正成の具足姿に、青葉の木洩こもがチラチラして行く。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そういえば、初蝉はつぜみが聞えだしたな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)