入智慧いれぢえ)” の例文
もちろん、嫁の入智慧いれぢえです。母は盲目だし、いい加減にだまして、そうしてこっそり馬小屋のマギに圭吾をかくし、三度々々の食事をそこへ運んでいたのだそうですよ。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
他人の入智慧いれぢえ同様に意味の少ないものとして、単に彼女と僕を裸にした生れつきだけを比較すると、僕らはとてもいっしょになる見込のないものと僕は平生から信じていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いとまが出て当時では谷中仲門前の長安寺と云う寺に居るんだと聞いたから、もう一仕事しようと思って粂のとこへ出かけ、旨くだまかして金子かねを持って逃げておいでなさいと云ったのは、私の入智慧いれぢえ
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『——兵部の態度は、情に於ては、憎いが、道理はある。だが、四十年も添うてきた其方そちまでが、この年齢としにもなって、里方に帰るとは、何たる事じゃ。察するところ、それも、兵部の入智慧いれぢえであろうが』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)