この精神こそは奈良朝ならちょうで有名な光明皇后こうみょうこうごうのみこころを動かしたものであって、「折りつればたぶさにけがるたてながら三世みよの仏に花たてまつる(三二)。」とおみになった。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
この堂は光明皇后こうみょうこうごう建立こんりゅうにかかるもので、幾度かの補修を受けたではあろうが、今なお朗らかな優美な調和を保っている。天平建築の根強いすこやかさも持っていないわけではない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
光明皇后こうみょうこうごうの御顔をうつしたてまつったという仏像や、その他のものにも当時の美女の面影をうかがう事が出来る。上野博物館にある吉祥天女きっしょうてんにょの像、出雲いずも大社の奇稲田姫くしいなだひめの像などの貌容がんように見ても知られる。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
なお、為頼朝臣集ためよりあそんしゅうに「折りつれば心もけがるもとながら今の仏にはな奉る」とあり、光明皇后こうみょうこうごうの御詠として「わがために花は手折たおらじされどただ三世の諸仏の前にささげん」
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)