俎橋まないたばし)” の例文
まもなく俎橋まないたばしの大吉が文次郎を縛ったと聴いて、なんとかして文次郎を救い出し、娘の喜ぶ顔が見たいと思い込んだのです。
俎橋まないたばしの警察に駈付けて来た禿頭とくとうの丸柿親爺おやじは、娘の無事な顔を見ると泣いて喜んだが、手錠をかけられた男を見ると血相を変えて掴みかかろうとした。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
知己を番町の家に訪えば主人あるじは不在、留守居の者より翻訳物を受取ッて、文三がと来たみちを引返して俎橋まないたばしまで来た頃はモウ点火ひともし頃で、町家では皆店頭洋燈みせランプともしている。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
湖山が俎橋まないたばしからお玉ヶ池に家を移したのはこの年の冬にあらざれば次の年の春であろう。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
間もなく俎橋まないたばしの文吉が文次郎を縛つたと聽いて、なんとかして文次郎を救ひ出し、娘の喜ぶ顏が見度いと思ひ込んだのです。
考えて見ると、成程俎橋まないたばしを渡ッて九段坂を上ッた覚えがかすかに残ッている。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
そのまま、細いステッキを振り振り俎橋まないたばしの方へ抜けて行った。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この年九月、横山湖山が九段坂下俎橋まないたばしに家をうつした。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
申松さるまつ親分は、朝田屋の伜の門太郎を縛つて俎橋まないたばしの番所に引揚げて行きましたよ。其處にウロウロして居たんださうで」
「なアに、つまらねえ物盜りなんだが、怪我人があるから、俎橋まないたばしの大吉親分がやつきとなつて調べてゐますよ」
「なアに、つまらねえ物盗りなんだが、怪我人があるから、俎橋まないたばしの大吉親分がやっきとなって調べていますよ」
「あの晩お隣の文次郎さんは、風呂へ行つたことにして、私の娘と俎橋まないたばしの邊で逢つて居たさうで——」
「落着いちゃいけませんよ、親分。俎橋まないたばしの大吉親分は、加島屋の倅文次郎を縛って行きましたぜ」