五臓六腑ごぞうろっぷ)” の例文
門のそとの石段のうえに立って、はるか地平線を凝視し、遠あかねの美しさが五臓六腑ごぞうろっぷにしみわたって、あのときは、つくづくわびしく、せつなかった。
狂言の神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
叔父はこれがために一生めとらず、彼らとともにつぶさに辛酸をなめ尽くした。その恩義、その慈愛は、ロイド・ジョージの五臓六腑ごぞうろっぷにしみわたっている。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
五臓六腑ごぞうろっぷの煮え繰り返るような焦燥に駆られて、敬二郎は夜もろくろく眠ることができなかった。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
引用するまでもなく地震や風水の災禍の頻繁ひんぱんでしかも全く予測し難い国土に住むものにとっては天然の無常は遠い遠い祖先からの遺伝的記憶となって五臓六腑ごぞうろっぷにしみ渡っているからである。
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
中から五臓六腑ごぞうろっぷしぼられたんではたまりません、ああお気の毒な、あれほどの先生が、こんなことで暗々やみやみと……わたしはお気の毒なのと口惜しいのと怖ろしいのとで、目をつぶってしまいました
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かおりよいが、ほんのりと五臓六腑ごぞうろっぷ染渡しみわたる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)