五十里いかり)” の例文
鬼怒川はこれより左折し、路は五十里いかりより流れ來れる一小溪に沿ふ。この小溪と鬼怒川と合する處、三角形を爲し、その一角に當つて、突兀たる一奇山龍蛇の蟠るごとく屹立す。
日光山の奥 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
茱萸の木から暫くで道は五十里いかり川の岸へ出る。河の流は道路からでは餘程低くて一つの大きな瀑布を形つて居る。之が不動瀧である。瀧の上の巖の頂には矮小なひねびた松がかぶりついて居る。
痍のあと (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
五十里いかりのダム工事も、この山中を、たちまち町と化した原動力であろう。機械力と自然が噛みあい咆哮しあう絶壁の下を車はうねうねあえいでゆく。山下運転手君は、平地を見るのとおなじである。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)