“いかり”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:イカリ
語句割合
30.7%
29.3%
17.0%
憤怒5.2%
忿怒3.3%
忿2.6%
1.5%
憤恚1.5%
1.5%
五十里1.1%
怒気0.7%
0.7%
震怒0.7%
0.7%
瞋恚0.4%
譴怒0.4%
忿激0.4%
0.4%
憤激0.4%
激怒0.4%
発憤0.4%
發憤0.4%
0.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
けれども僕は里子のことを思うと、うらみいかりも消えて、たゞ限りなき悲哀かなしみに沈み、この悲哀の底には愛と絶望が戦うて居るのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それで、何隻もの捕鯨船が、港にいかりを入れたまま、動けなくなってしまった。それから急に、アメリカの捕鯨船は、だめになった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
その中にいかりを上げ帆を捲いて船を出したが、進むに従って横波が船の腹をドサンドサンと打って動揺して、それが段々ひどくなった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
云ふが儘に、酒が運んで来られたので、今ぐられた憤怒いかりは殆ど全く忘れたやうに、余念なく酒を湯呑茶椀であふり始めた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
斯の亂暴な行ひは直に小さな姪のいたづらと知れましたが、そのために自分の忿怒いかり奈何どうすることも出來ませんでした。私はその帳面を引裂いて了ひました。
事の意外に出でたる驚、ことばに現すべからざる痛、負心ふしんの人に對する忿いかり、皆明かに觀る人の心に印せられき。ヂドは今おもなる單吟アリアに入りぬ。
君子の音は温柔おんじゅうにしてちゅうにおり、生育の気を養うものでなければならぬ。昔しゅん五絃琴ごげんきんだんじて南風の詩を作った。南風のくんずるやもって我が民のいかりを解くべし。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかもその語尾は抑え切れない憤恚いかりにふるえているのが、玉藻にはよく判っているらしかった。二人の話はしばらく途切れた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
崑はいたずらに小さな蛇を函の中へ入れて、十娘をだましてその函をけさした。十娘は顔色を変えて怒って、崑を罵った。崑もまた笑っていたのがかわっていかりとなった。
青蛙神 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
茱萸の木から暫くで道は五十里いかり川の岸へ出る。河の流は道路からでは餘程低くて一つの大きな瀑布を形つて居る。之が不動瀧である。瀧の上の巖の頂には矮小なひねびた松がかぶりついて居る。
痍のあと (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
頭ごなしにのゝしらうとして、かへつて丑松の為に言敗いひまくられた気味が有るので、軽蔑けいべつ憎悪にくしみとは猶更なほさら容貌の上に表れる。『何だ——この穢多めが』とは其の怒気いかりを帯びた眼が言つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
花園には若い男と自分のむすめが醜い死屍しがいを横たえていた。劉万戸は自分の頭へ糞汁をかけられたようないかりをもって、その死屍を睨みつけていたが、ふと二人の関係が知りたくなった。
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
六節には彼の地文学ちもんがくの知識がうかがわれる、「れ(神)山を移し給うに山知らず、彼れ震怒いかりをもてこれをくつがえし給う」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
そこへいかりまなじりげた、一人ひとりわかおんなあらわれて、口惜くやしい口惜くやしいとわめきつづけながら、くだんおとこにとびかかって、頭髪かみむしったり、顔面かおっかいたり、あしったり、んだり
彼は裂けるばかりに瞋恚いかりのまなじりをあげて、霹靂はたたがみの落ちかかるように叫んだ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その美しいまなじりには少しく瞋恚いかりを含んでいるらしかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
世を挙げて心傲ると歳久し天地の譴怒いかりいただきにけり
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大君おほきみは天の譴怒いかりみづから照らす御光みかげしみたまへり
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
長い間胸にこだわっていた憤恚ふんいが一時ゆるんだとしても、それはやがて猛然と爆発する前提に外ならなかった。彼はかっと腕を振りあげ、はげしい忿激いかりのために却って低声こごえになって
生さぬ児 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
五三仏菩薩のをしへの広大なるをもしらず、愚かなるまま、五四かだましきままに世を終るものは、其の五五愛慾邪念の五六業障ごふしやうかれて、或は五七もとかたちをあらはしていかりむく
憤激いかりの余り肩で呼吸をしている呉羽の見幕に辛うじて対抗しながら、真似をするように息を切らした。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それが、激怒いかりにふるえる手で、袴の膝をつかんで、ぐっと斜めに上半身を突き出した。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
毒竜は発憤いかりまなこ
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
毒龍どくりよう發憤いかり
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
カカリというのは、トモとミヨシに両いかりを入れて、コマセのために生きた川エビをオモリのついた金網に入れ、海底へ沈めてまく。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)