乾燥ひから)” の例文
乾燥ひからびた蟯蟲ぎょうちゅうの死体のようでもあり、また、不気味な鞭毛蟲が排泄する、長い糞便のようにも思われるのだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「ええ。」女はまた男のしめった乱髪みだれがみに接吻した。女はなんとも云えないほど悲しかった。泣きたいようであった。しかしその感動には一種の枯れた、乾燥ひからびたような心持ちが交っていた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
両掌りょうてでシッカリと顔をおおうて、指先で強く二つの眼のたまを押えた。頭のしん乾燥ひからびたような、一種名状の出来ない疲労を覚えると共に、強く押えた眼の球の前にいろいろな幻像があらわれるのを見た。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)