中坂なかざか)” の例文
二人は肩を並べるように、中坂なかざか同朋町どうぼうちょうの方へ降りたのですが、妙に話の継穂つぎほを失って、しばらくは黙りこくっていたのでした。
麹町こうじまち九段——中坂なかざかは、武蔵鐙むさしあぶみ江戸砂子えどすなご惣鹿子そうかのこ等によれば、いや、そんな事はどうでもいい。このあたりこそ、明治時代文芸発程の名地である。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて、九段下から中坂なかざかのほうへ曲ろうとするとき、向うにぽっちり人影が見えて来たが、夜遊びにでも出た若侍わかざむらいであろうと、誰も気にする者はない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この馬琴の硯の水の井戸は飯田町の中坂なかざかの中途、世継稲荷よつぎいなりの筋向いの路次ろじの奥にある。中坂といっても界隈かいわいの人を除いては余り知る者もあるまいが、九段くだんの次の険しい坂である。
九段の中坂なかざか近く。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)