下枝しずえ)” の例文
山桜は、散り果ててしまったが、野生の藤が、木々の下枝しずえにからみながら、ほのかな紫の花房をゆたかに垂れている。
仇討三態 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
叔母には下枝しずえ、藤とて美しき二人の娘あり。我とは従兄妹いとこ同士にていずれも年紀としは我よりわかし。多くの腰元に斉眉かしずかれて、荒き風にも当らぬ花なり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
砲弾にいただきを削り去られたかばの木にも、下枝しずえいっぱいに瑞々みずみずしい若芽が、芽ぐんできた。
勲章を貰う話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
茶屋の際の葉柳の下枝しずえくぐって、ぬっくりと黒くあらわれたのは、たてがみから尾に至るまで六尺、たけの高きこと三尺、全身墨のごとくにして夜眼やがん一点のはくあり、名を夕立といって知事の君が秘蔵の愛馬。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)