上方訛かみがたなまり)” の例文
書画、古着、手道具、骨董こっとう、武具、紙屑かみくずに至るまで、それぞれを専門とする上方訛かみがたなまりの商人の声が、屋敷町の裏をうるさく訪れて廻っている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九郎助は灯から顔をそむけるように、ただおろおろと弁解するのです。見る影もない中老人で、半面に青痣あおあざのある、言葉の上方訛かみがたなまりも妙に物柔らかに聞えます。
上方訛かみがたなまりを聞かれることが気が引けるので、さながら敵地にいる心地で身をすくめながら、あたりでぺちゃくちゃ取り交される東京弁の会話に、こっそり耳を傾けているより外はなかったが
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
直助は三十を越した、愛嬌のある好い男、少しばかり上方訛かみがたなまりのあるのも、上手な商売人らしい印象を与えます。
「顏だけは知つて居ますよ。遊佐ゆさ右太吉うたきちとか言ふ、厄介な男で、庄司の若旦那の彌三郎さんは眤懇ぢつこんにして居るやうだが、油斷のならない男です。——少し上方訛かみがたなまりがありますが」
不意にたづねると、幸ひ主人の直助も、妹のお辰も顏を揃へて居りました。直助は三十を越した、愛嬌のある好い男、少しばかり上方訛かみがたなまりがあるのも、上手な商賣人らしい印象を與へます。