わたくしは取るものも取敢とりあへずその夜のうちに随心院へ参り、雑兵劫掠ぞうひょうきうょりゃく顛末てんまつを深夜のことゆゑお取次を以て言上ごんじょういたしましたところ、太閤たいこうにはお声をあげて御痛哭つうこくあそばしましたよし
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)