附人つけびと)” の例文
林右衛門は、家老と云っても、実は本家の板倉式部いたくらしきぶから、附人つけびととして来ているので、修理も彼には、日頃から一目いちもく置いていた。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「そんな所に、何をしておいでなされましたか」附人つけびとの寺侍は、叱るように、丘を仰向あおむいていった。稚子の遮那王は
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御家来ではなし、これは代官から、従者とお目附をかねた附人つけびとたちだなと、兵馬は感づきました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
真正しんしょうの落胤であるという事に、疑いの無い以上、そういう問答によって、顔色を変える必要は無かったが、人々は——天一坊も、附人つけびとも、越前を名判官はんがんであると信じ、その証拠物の調べにより
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
それから、本家ほんけ附人つけびととして、彼がいんに持っている権柄けんぺいを憎んだ。最後に、彼の「家」を中心とする忠義を憎んだ。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
師氏は、兄と目をみあわせ、自分らは、足利若御料のお附人つけびと細川兄弟である。だが心配するな、たとえ北条方の縁故であろうと、女子供にまで危害を加えるものではないと、なだめた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年よりもふけた、彼の顔は、この頃の心労で一層しわを増している。——林右衛門のくわだては、彼も快くは思っていない。が、何と云っても相手は本家からの附人つけびとである。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まだ陣所から附人つけびとの武者が附いているのは、どうしたわけであるか? ——まだ罪をゆるされてお帰りになったわけではないのか? ——それから先に安心させて下さいと訊ね始めた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上杉家からさし廻してある腕ききの附人つけびとが住んでいるものと見て、早水藤左衛門と神崎与五郎に弓を持たせ、ほか四五名の者を伏せて様子を見ていたのであるが、さしたる敵も出て来ないので
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)