野州やしう)” の例文
野州やしうはすぐれた山水の美をあつめてゐるので聞えてゐる。水石の美しいので聞えてゐる。深い溪谷の多いので聞えてゐる。雲煙の多いので聞えてゐる。
日光 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
始め彼三五郎鴻の巣なる鎌倉屋金兵衞其ほか野州やしう浪人八田掃部三加尻茂助練馬藤兵衞などの菩提ぼだいとぶらひ又元栗橋の隱亡をんばう彌十などの安穩あんをんに歸島致す樣祈祷きたう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
胸中ことに察するに余りあるが、その燕路は今夏不遇裡ふぐうりに、かの歌笑と相前後して没し、かしくは郷里の野州やしうへかへつて以来、消息を聞かず、おもひでは共に寂しい。
落語家温泉録 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
晴れたり曇つたりする日の右手の車窓には梅雨つゆの雲の間に筑波の山が下總しもふさの青田の上、野州やしうの畑の上から美しいその姿を見せ、左方の日光つゞきの山々はなほ薄雲の中に隱れてゐて
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)