行人坂ぎょうにんざか)” の例文
たとえば君が住まわれた渋谷の道玄坂どうげんざかの近傍、目黒の行人坂ぎょうにんざか、また君と僕と散歩したことの多い早稲田の鬼子母神きしもじんあたりの町、新宿、白金……
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
駒込の富士から神田明神、深川八幡の境内、鉄砲洲てっぽうずの稲荷、目黒行人坂ぎょうにんざかなどが、その主なる場所であった、がそれも、今ではお伽噺とぎばなしになってしまった。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
目黒の停車場ステーションは、行人坂ぎょうにんざかに近い夕日ゆうひおかを横に断ち切って、大崎村に出るまで狭い長い掘割になっている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
外濠そとぼりに添い、増上寺の山内に隠れ、白金台を一気に駈けて、やがて、目黒の行人坂ぎょうにんざかの途中、紫陽花寺あじさいでらの門前で止まったと思うと、女の影は、駕を脱けて、ひらりっと
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時ならぬ落葉を踏み踏み火薬庫の裏手を行人坂ぎょうにんざかの方へと歩いた。時ならぬ落葉に遊意を催したのである。樹の下を通る時汗ばんだ額にあたる風がひやりとする程つめたい。
写況雑記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
目黒行人坂ぎょうにんざかの火事、これは皆様方みなさんがたも御案内の事で、それに赤坂の今井谷から出まして、麻布十番から古川雑色綱坂ぞうしきつなざかを焼払い、三田寺町、聖坂ひじりざかから三かくへ掛け、田町へ出まして
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
六軒茶屋町ろっけんじゃやまちから永峰町ながみねちょう行人坂ぎょうにんざかを越して、ガラッ八は女の姿を見失ってしまったのです。
寺を語れば、行人坂ぎょうにんざかの大円寺をも語らなければならない。行人坂は下目黒にあって、寛永かんえいの頃、ここに湯殿山ゆどのさん行人派の寺が開かれた為に、坂の名を行人と呼ぶことになったという。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
明和九年二月二十九日のひるごろ目黒めぐろ行人坂ぎょうにんざか大円寺だいえんじから起こった火事はおりからの南西風に乗じてしば桜田さくらだから今のまるうちを焼いて神田かんだ下谷したや浅草あさくさと焼けつづけ、とうとう千住せんじゅまでも焼け抜けて
函館の大火について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
寺を語れば、行人坂ぎょうにんざかの大円寺をも語らなければならない。行人坂は下目黒にあって、寛永の頃、ここに湯殿山行人派の寺が開かれたために、坂の名を行人と呼ぶことになったという。
目黒の寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
壮者わかもののような迅い足で、彼はまもなく、白金台しろがねだいから目黒の行人坂ぎょうにんざかを歩いていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)