藍染川あいそめがわ)” の例文
岡田の日々にちにちの散歩は大抵道筋が極まっていた。寂しい無縁坂を降りて、藍染川あいそめがわのお歯黒のような水の流れ込む不忍しのばずの池の北側を廻って、上野の山をぶらつく。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
第五は芝の桜川さくらがわ根津ねず藍染川あいそめがわ、麻布の古川ふるかわ、下谷の忍川しのぶがわの如きその名のみ美しき溝渠こうきょ、もしくは下水、第六は江戸城を取巻く幾重いくえほり、第七は不忍池しのばずのいけ角筈十二社つのはずじゅうにそうの如き池である。
即ち小石川柳町こいしかわやなぎちょう小流こながれの如き、本郷ほんごうなる本妙寺坂下ほんみょうじざかしたの溝川の如き、団子坂下だんござかしたから根津ねづに通ずる藍染川あいそめがわの如き、かかる溝川流るる裏町は大雨たいうの降る折といえば必ず雨潦うりょうの氾濫に災害をこうむる処である。
根岸の藍染川あいそめがわから浅草の山谷堀さんやぼりまで歩みつづけたような事がある。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)