肚立はらだ)” の例文
「またこんなにお預かりしたの、お祖父じいさん」留守に来て又三郎の置いてゆく金を見て、お紋は肚立はらだたしげによくそう云った
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
帯刀は手紙を巻きながら、「朝田さんの意見はわかった」とうなずき、ついで肚立はらだたしげに云った、「だがこの手紙を読んでいるのに、なぜ隼人はなにも云わなかったんだ」
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そう思うと、おみのにも自分にも肚立はらだたしくなり、酔いに任せて饒舌じょうぜつになった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こう云うばかりでまったくらちが明かなかった、したがって死んだものと信じていた八百助の帰ったことは肚立はらだたしくもあるが、また一方では巨富の所在がわかるだろうという希望をも持たされたのだ。
それがまた肚立はらだたしくなるのであった。
雪の上の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)