聖餐せいさん)” の例文
そのうえ、犯人に対してもつとめてキリスト教的な交わりを絶やさぬようにして、教会の勤行きんこうにも聖餐せいさんにも参列させるし、施物も分けてやる。
彼は聖餐せいさんが風に投げ散らされるのを見る牧師のようであり、偶像の上に通行人がつばしてゆくのを見る道士のようだった。
宗教は聖餐せいさんにあらず、洗礼にもあらず、但しは、法則にも、誡命にもあらざるなり、赤心の悔改と赤心の信仰とは、いかなる塲合に於ても尤も大なる宗教なり。
復讐・戦争・自殺 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
教会では聖餐せいさん侍童のつとめをし、間もなく補祭になった。軍隊でも優秀な成績をあげて伍長に昇進した。
青髯二百八十三人の妻 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
かくて籠城以来、本丸に翻って居た聖餐せいさんの聖旗も地に落ちて、さしもの乱も終りを告げたのであった。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父の子は世界の罪をあがなうために殺される。その肉と血にあずかるのが「聖餐せいさん」である。かかる密儀に関連してイエス・バラバの名は古くより知られていたと考えてよい。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
食事は聖餐せいさんのような厳かさと、ランデブウのようなしめやかさで執り行われて行く。今やテーブルの前には、はつ夏の澄める空を映すかのような薄浅黄色のスープが置かれてある。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
僧らは菩提達磨ぼだいだるまの像の前に集まって、ただ一個のわんから聖餐せいさんのようにすこぶる儀式張って茶を飲むのであった。この禅の儀式こそはついに発達して十五世紀における日本の茶の湯となった。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
丁度その日曜は聖餐せいさんの日に当っていた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、敷居の上に、用意の聖餐せいさんを捧げた僧が現われた。小がらな白髪の老人である。そのうしろから、巡査がついてきた。通りから一緒なのである。
それからすぐに懺悔ざんげをすることと聖餐せいさんを受けることを所望した。彼の懺悔を聞く相手はいつもパイーシイ主教であった。この二つの聖秘礼ののち、聖油塗布の式が行なわれた。
明日はも一度、ぜひ聖餐せいさんを受けたいと申しておられる。