鏡の如き蒼海を脚下に見、カプリの島の外遠くかけりて、夕陽の雲の奧深く入りしときは、忽ち粉堞彫墻ふんてふてうしやうの前に横はるを見て、これは何ぞと問ひしに、少女答へて、母君の築き給ひし城よと云ひぬ。