穴埋あなうめ)” の例文
私は鋸屑おがくずにかわで練っていたのだ。万豊の桐畑から仕入れた材料は、ズイドウ虫や瘤穴こぶあなあとおびただしくて、下彫の穴埋あなうめによほどの手間がかかった。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
島田の奴が馬を引張ひっぱって来たので、仕方がないから有合ありあいのものを典じて始末をつけたが、その穴埋あなうめをしなけりゃならん。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
果してそれが柳屋のならんには、米が砂利になる法もあれ、お囲いなどとは、推参な! 井戸端の悪口穴埋あなうめにして、湯屋の雑言焼消そう、と殺気を帯びて来たのであるから、愛吉はこれは、と思った。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)