種子たねこ)” の例文
宛名は種子たねこという未亡人の名で、差出人も女名前であったが、重吉はその瞬間一種の暗示を感じたまま、事務所へき着くが否や、巧みに封じ目ののりをはがして中の手紙を見た。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
畳も汚れた貸二階に据えてある箪笥たんす火鉢から、机座布団ざぶとんに至るまで、家具一切いっさいはかつて資産のある種子たねこの家にあったものばかりなので、お千代の人品に比較して品物が好過よすぎるところから
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)