たぶ)” の例文
さうかと思ふと又心から人を見くびりせせら笑ひ影の影からあやかしたぶらかすやうな、一度聴いたら逃れる事も忘れる事も出来ない、何かの深い執念と怪しい魔力をひそめた声音こわねである。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それは、英雄ジーグフリードの妻クリームヒルトが、夫を害しようとするハーゲンにたぶらかされて、やいばも通らぬ夫の身体の中に、一個所だけ弱点があるのを打ち明けてしまう章句ところだった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
はねさんで嘘吐きで怜悧りかうで愚かで虚栄家みえばうで気狂で而して恐ろしい悪魔のやうな魅力と美くしい姿……凡てが俺の芸術欲をそそのかしたぶらかし、引きずり廻すには充分の不可思議性をかくして居た、たと
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)