真崎稲荷まっさきいなり)” の例文
遥なる木母寺もくぼじ鉦鼓しょうこに日は暮れ、真崎稲荷まっさきいなりの赤きほこらに降る雪の美し(下巻第六図)と見るもなく
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あるいは橋場はしば瓦斯ガスタンクと真崎稲荷まっさきいなりの老樹の如き、それら工業的近世の光景と江戸名所の悲しき遺蹟とは、いずれも個々別々に私の感想を錯乱させるばかりである。
川霧立まよふ頃の夕まぐれ、ここの渡しをいそぎ橋場の岸近くなる時真崎稲荷まっさきいなりの森かげをぬひてくるわの灯を望み見たりし情景も明治四十一年の頃には既に過ぎし世の語り草なりけり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)