白痴美はくちび)” の例文
美貌びぼうであって気稟きひんがあり、叡智えいちであって冷たくない顔。そして高貴なにおいをもち、いわゆる白痴美はくちびでなく、花にも負けない人間の顔の美。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親は家柄のよい、出世にも無理のない本田傳右衞門、内儀は五十近く、娘が少々白痴美はくちびでは、どう考へても人に怨みを受ける筈もありません。
年の頃、精々十九、二十歳、無表情で整ひ過ぎて、少し白痴美はくちびに近い美しさですが、魂の通つた人形を見るやうで、それがまた限りない魅力でもあります。
死の變貌で不氣味なゆがみを見せてをりますが、それでも、お轉婆らしい白痴美はくちびは、死もまた奪ふに由なく、頬に殘る、異常な緊張さへも、アブノーマルな美しさと言へないこともありません。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
娘のお玉はたゞおど/\するだけ、丸顏の色白で、十八の可愛らしいさかり、どうかすると白痴美はくちびを思はせるのは、特別に美しい笑顏のせゐで、こんな娘が、案外性根がしつかりしてゐるのかもわかりません。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)