猿臂ゑんぴ)” の例文
猿臂ゑんぴをのばいたと見るほどに、早くも敵の大将を鞍壺くらつぼからひきぬいて、目もはるかな大空へ、つぶての如く投げ飛ばいた。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
再び猿臂ゑんぴを延して、瑠璃子の柔かな、やさ肩を掴まうとしたが、軽捷な彼女に、ひらりと身体を避けられると、酒に酔つた足元は、ふら/\と二三歩よろめいて、のめりさうになつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
つきめ忌〻しい、と駄力ばかりは近江のお兼、顔は子供の福笑戯ふくわらひに眼を付け歪めた多福面おかめの如き房州出らしき下婢おさんの憤怒、拳を挙げて丁と打ち猿臂ゑんぴを伸ばして突き飛ばせば、十兵衞堪らず汚塵ほこりまみ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
飛退く女の帶際を猿臂ゑんぴを延ばしてむんずと掴んだにせ家光。
言ひつゝヒヨイと猿臂ゑんぴを延ばして
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)