独白ひとりごと)” の例文
旧字:獨白
五郎造はぶつぶつ独白ひとりごとをいっては、腹を立てていた。吉治の怪我で、彼はなにか大変困ったことに直面しているらしい様子だった。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「師匠が、どうして、三味線をお弾きにならないのでございましょう」と、独白ひとりごとしたほどでございました。
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
年増の侍女でさえかかる独白ひとりごとに熱中するくらいだから、甘味といえば選り好みなしの若い腰元たちが、いかなる空想にふけり幻想に酔ったかはお察しなされよう、だが閑話休題と致す。
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれども三四郎の耳には明らかにこの一句が、すべてに捨てられた人の、すべてから返事を予期しない、真実の独白ひとりごとと聞こえた。三四郎は気味が悪くなった。ところへまた汽車が遠くから響いて来た。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東山——(独白ひとりごと)何だか事件が複雑になってきたようだぞ。
探偵戯曲 仮面の男 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
課長は手をのばして、葉巻を一本口へほうりこんだ。そして思わず独白ひとりごとした。
一九五〇年の殺人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、独白ひとりごとしていたのでございます。
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
老人は失望の独白ひとりごとをもらした。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
取りとめもない独白ひとりごとのあとは、鼻にかかる何やら音頭の歌い放し。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)