無役むえき)” の例文
ヴァン・ダインとかクイーンとか、無役むえき衒学げんがくで、いやらしくジラシたり、モッタイぶったりするから、気持よく読みつづけられない。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「君は今すでに腹の中で戦いつつあるんだ。それがもう少しすると実際の行為になって外へ出るだけなんだ。余裕が君を煽動せんどうして無役むえき負戦まけいくさをさせるんだ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こういう役にも立たぬ律儀が万事につけて無役むえきな悲劇を生むものだ。私もそれをやります、と虎の顔にも書いてあるぜ。
だが、こんな異体えたいの知れない言葉から意味ありげな何物かを探し出さうとする無役むえきなことは忘れることにしやう。
姦淫に寄す (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
それゆゑ彼女との無役むえきな時間が、退屈ではあつたが、むしろ退屈であるために私の心を和やかにした。しん/\と流れるものが私のうなじをとりまいてゐたのだ。
訣れも愉し (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
この町内へもぐりこみ訪ねてくるのは巡査とか借金取りとか、どうせロクでもないものに限っているから、表札なぞというものほど無役むえき有害なものはないのである。
一向埒のあかないうちに遠慮会釈もなく締切の期日がとつくに過ぎ去つてしまつたことに由来する悒鬱ゆううつ極まる自責の念が手伝つて、いささか無役むえきに暗澹としすぎたのかも知れません。
「警部さん。無役むえきな話は止しましょう。犯人は外から来やしませんよ。分りきった話です。そんな風にいたわられるのは、我々の神経には、からかわれると同じ意味にひびくのです」
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
おい、海老塚君、我々の集りに君自身が顔をだすさえ無役むえき、不快であるというのに、我々の同意もまたず、未知の人をつれてくるとは何事だい。我々は君の家の客人ではないのだぜ。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
無役むえきに人を嘆かせるばかりのものを