海鼠塀なまこべい)” の例文
もう、忍びやかな夕陽ゆうひの影が、片側の松平越中様の海鼠塀なまこべいにはい寄って、頭上のけやきのこずえを渡る宵風には、涼味りょうみがあふれる。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
根気よく影をつけていた浜島庄兵衛の日本左衛門には、そろそろ思うつぼの並木や、人通りのまれな海鼠塀なまこべい、暗やみです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
に飽きた金魚のように口をモグモグさせながらも、あまりの事に声を得立えたてず、両手の指を交る交るに突き出して、前方に立ちふさがる、海鼠塀なまこべいの土蔵を指すのでした。
夜眼にも白い海鼠塀なまこべいが、何町というほどズウッとつづいているのが、道のはずれに遠く見える。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かなり荒廃した海鼠塀なまこべいの一軒の屋敷、そこでミリッと生木の裂けるような音がしたかと思うと、松の枝をしなわせて塀を越えた一人の若者が、ひらりと、大地へおどり立ちました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海鼠塀なまこべいの土藏を指すのでした。
松平下総守様しもうさのかみさまのお下屋敷を左に見て、韓軫橋かんしんばしをわたると、右手が佐竹右京太夫さたけうきょうだゆうのお上屋敷……鬱蒼うっそうたる植えこみをのぞかせた海鼠塀なまこべいがずうっとつづいていて、片側は、御徒組おかちぐみの長屋の影が
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)