天明八年の火事とは、正月みそか洛東団栗辻らくとうどんぐりつじから起って、全都を灰燼かいじんに化せしめたものをいうのである。幕府はこの答に満足せずに、似寄によりの品でもいから出せと誅求ちゅうきゅうした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)