河合かわい)” の例文
水のうえには荷物船やぽっぽ蒸汽が忙しそうに往来し、そこにも暮らしい感じがあった。伊井や河合かわいの根城だった真砂座まさござは、もう無くなっていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「今日は河合かわいの——お父さんは御存知ないでしょう。——僕と同じ文科の学生です。河合の追悼会ついとうかいがあったものですから、今帰ったばかりなのです。」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
………敏子が洋裁の河合かわい女史を連れて来た。この人は洋裁を教えるかたわらアルバイトに婦人服の注文に応じている。税金がかからないので市価より二三割安くできる。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「君が河合かわい庄太郎か」刑事が横柄おうへいな調子で云った「オイ、番頭さん、この人だろうね」
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いや河合かわいさんだよ! なぜ入らないのさ! あたしの家だのに、誰に遠慮を——」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現代の温気の世界は何を創造しつつあるか、まだよく判然しないけれども、先ず河合かわいダンスと少女歌劇と、あしべ踊りと家族温泉と赤玉女給等は、かなり確かな存在であろうと考える。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「何と云えばいですか?——まあ、こんな点ですね、たとえば今日追悼会ついとうかいのあった、河合かわいと云う男などは、やはり自殺しているのです。が、自殺する前に——」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)