気中きあたり)” の例文
下り船の乗りがけに、いやな気中きあたりがしたが、あれこそは、こんなやつといっしょに、南の海の果で藻屑になるというしらせだったのだろう
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
気中きあたりがして甲板へ出てみると、端艇架ダビットのそばにBコートを着た船員が三人ばかり舷側から乗りだすようにして海を見ていた。
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
気中きあたりがして、中をのぞいて見ると、寝台の上にフェルナンデスが俯伏せになり、知世子のほうは、ひどくちぐはぐな恰好でゆかの上にのびている。
予言 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
妹に頼まれて面甲を叩きつけに行ったときふとそう思い、気中きあたりがしてしようがなかったが、この間、いつぞやの嫌味を言いに行くと、出居でいの敷莚に胡坐をかいているやつがいる。誰だと思います。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)