「まア、よい。五人の命を助けた手柄に免じて、今度だけは朝倉石見守あさくらいわみのかみ様の手前を取りつくろってやろう。以後はならぬぞ」
「一つ間違えば、御奉行朝倉石見守あさくらいわみのかみ様は申すに及ばず、御老中方にとっても腹切り道具だ。押付けがましいが平次、命を投げ出すつもりでやってみてはくれまいか」
平次、御奉行朝倉石見守あさくらいわみのかみ様からきつい御達しだ、——近頃府内を騒がす盗賊、盗んだ品を返せば罪はないようなものではあるが、あまりと言えばお上の御威光をないがしろにする仕打だ。
南町奉行朝倉石見守あさくらいわみのかみは、与力筆頭笹野新三郎を呼び付けて鞭撻べんたつすると、笹野新三郎は利助や平次をせき立てる有様、こう事件が深刻になっては、手柄争いどころの沙汰ではありません。