施行せぎょう)” の例文
何を問うまもなく、ふたたび駈けだした駕と人数は、堀端の施行せぎょう小屋の前から横道へそれて、佐竹ッ原の野中へグングンと入って行った。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
願阿弥陀仏がんあみだぶつと申されるおひじりは、この浅ましさを見るに見兼ねられて、義政公にお許しを願って六角堂の前に仮屋を立て、施行せぎょうをおこなわれましたが
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
五年の秋には、暴騰して、囲米厳禁の布令が出て、米施行せぎょうがあった。江戸では、窮民のお救い小屋さえ出来た。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
ある時、和尚さんが、お寺へ紅白のきれを、何ほどか寄進をして欲しいものじゃ、とおっしゃるんです。寺の用でない、諸人しょにん施行せぎょうのためじゃけれど、この通りの貧乏寺。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
施行せぎょうは彼の我に与うるによって彼の檀波羅密だんはらみつじょうじ、我の彼に受けてむくいるに法を与うるを以てするの故に、我の檀波羅密を成じ、速疾得果の妙用を現ずるを観た。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
施行せぎょうの湯治場へさえも、なるべく遠のくように心がけていると、今度は、先方から押しかけて来る、その人の足が日に増し、これも加速度にえてくる気配を見て、与八がまた怖れる。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
乞食こつじき施行せぎょうを出したいと思います
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
施行せぎょうのことでしょう」
願阿弥陀仏がんあみだぶつと申されるおひじりは、この浅ましさを見るに見兼ねられて、義政公にお許しを願つて六角堂の前に仮屋を立て、施行せぎょうをおこなはれましたが
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
ちいさい小皿に引割を入れて施行せぎょうに庭へ並べて置くから、一つ取ったが、一つのさしに銭が一文あるから、そっとまた一つ取った、そうすると米をいていた男が見つけおって、腹を立て
無慮一百石を散ぜんとする未曾有みぞう施行せぎょうなりき。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ただし、後刻、説諭せつゆ申しつける。……また、近隣の者どもは、おとがめなし。……西門慶の家族らも、同様なれど、あるじ西門慶の生前の非道は人みな憎むところ。供養くようなど派手はで派手しくせず、追善の施行せぎょうに心がけたがよい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの災難の後、伊太夫は、慢心和尚を招じて大供養をいとなみ、追善として、米穀と、金銀とのおびただしい施行せぎょうを試みましたけれど、お銀様というものには、一指を染めることもできませんのです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それ、利くであしょ、ここでえるは施行せぎょうじゃいの。もぐさらずであす。熱うもあすまいがの。それ利くであしょ。利いたりゃ、利いたら、しょなしょなと消しておいて、また使うであすソ。それ利くであしょ。」とめ廻すてい
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)