抜差ぬきさし)” の例文
旧字:拔差
だから、ルキーンは電報がきても実際は行かずに食堂の中に止っていたのだよ。ところが、そうして抜差ぬきさしのならない窮地に陥ったラザレフは、たちまち一策を案じたのだ。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あたかも稲麻とうま竹葦ちくいと包囲された中に籠城ろうじょうする如くに抜差ぬきさしならない煩悶はんもん苦吟にさいなまれていた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
たえ子は次の火曜日の昼頃ひるごろに、再び三越の休憩室で落合ふことを約束して、そこ/\に袂を分つたのであつたが、二度も三度も……そして終ひには抜差ぬきさしのならないハメに陥つて行くのが不安であつた。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
空で指環を抜差ぬきさししてゐた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)