御下向ごげこう)” の例文
その時になると、神葬祭の一条も、何もかも、この街道の空気の中にうずめ去られたようになった。和宮様御下向ごげこうのうわさがあるのみだった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それにしても、おくがたはどのようなおこゝろもちで御下向ごげこうなされましたか。とかく再縁となりますと、いくらおりっぱな御こんれいでもさびしい気がするものでござります。
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
将軍家が江戸表へ御下向ごげこうのことは、今朝こんちょう支配がしらから改めて触れ渡された。この上はしょせん長逗留は相成るまい。遅くも来月の十日頃までには、一同京地を引き払うことになるであろう。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「えっ、御下向ごげこうですか」ふたりは、まろむように、奥の房へ駈けこんだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次ぎに、御伝馬宿々については今回の御下向ごげこうのため人馬の継立つぎたかたかさむから、その手当てとして一宿へ金百両ずつを貸し渡されるよう。ただし十か年賦にして返納する。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
勅使ちょくし御下向ごげこう饗応役きょうおうやくに』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちかごろ堂上の滋野井しげのい殿や綾小路あやのこうじ殿が人数を召し連れ、東国御下向ごげこうのために京都を脱走せられたとのもっぱらな風評であるが、右は勅命をもってお差し向けになったものではない
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)